データで読む開示
【鉱工業】9月の生産は8月減の約9割を回復、出荷は約2割
9月の鉱工業生産は前月比2.2%増だった。だが8月に落ちた指数の幅を基準にすると、生産が約9割を取り戻したのに対し、出荷の戻りは約2割。速報概況の15業種でも、生産と出荷がともに前月比で増えたのは4業種だった。前月比のプラスだけで、反発が同じ業種の出荷までそろったとは言えない。
観測数:15(速報概況の重複しない15業種(独立標本ではない))
最初に要点
- 2026年9月速報の鉱工業指数。8月の減少幅に対する9月の戻りは、生産が約9割、出荷は約2割。公表小数1桁の季節調整済指数から計算した概算だ。
- 速報概況の重複しない15業種では、前月より生産が増えたのも出荷が増えたのも各8業種だが、同じ業種で両方増えたのは4。7月水準を両方超えたのは1業種だった。
- 7~9月平均の全体指数は生産・出荷とも前期比0.3%上昇。7月基準の1/15は細分した18分類なら2/18になり、短期の一つの比較を長期的な産業順位や需要判断へ広げられない。
9月のプラスを、落ち込み前から見る
経済産業省の2026年9月速報では、鉱工業の生産指数が前月比2.2%、出荷指数が0.6%上がった。生産は作る動き、出荷は製品を送り出す動きを別々に測る指数だ。前月比がともにプラスでも、8月に失った水準をどれだけ取り戻したかは異なる。
7月、8月、9月を同じ公表版の季節調整済指数で比べると、8月の下落幅に対する9月の戻りは生産が約9割、出荷は約2割だった。この割合は生産量や販売量に占める割合ではなく、それぞれの指数の落ち幅を分母にした当記事の概算だ。
一方、7~9月の平均は4~6月の平均より生産・出荷とも公表値で0.3%高い。7月という下落前の一点へ戻ったかという問いと、四半期全体の方向は分けて読む必要がある。
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上昇した業種は同じだったか
速報概況に載る重複のない15業種で、9月に前月より生産が増えたのは8業種、出荷も8業種だった。しかし、同じ業種で両方増えたのは4業種。二つの『8』は同じ顔ぶれではない。
8月の落ち込み前である7月と比べると、9月に生産・出荷の両方が7月を上回ったのは、この15分類では生産用機械の1業種だ。ただし分類を細かくして18に分けると2業種になる。業種数は企業数や産業規模の割合を表さず、この速報の範囲で改善の重なりを確かめるための数だ。
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8月の落ち幅を指数でたどる
まず生産と出荷をそれぞれ同じ系列の中だけで比べる。指数は2020年の平均を100とした尺度で、季節調整済みの値を使うのは月ごとの季節的な揺れをならして7月、8月、9月を比較するためだ。図は両系列の7月を100に置き直した。
生産の7月104.4から8月101.9への落ち幅は2.5ポイント。9月104.1への増加幅2.2ポイントをこれで割ると88%。出荷では103.4から100.4への落ち幅3.0ポイントに対し、9月101.0への増加は0.6ポイントで20%となる。分母をそれぞれの落ち幅にそろえたことで、前月比だけでは見えにくい戻りの違いが分かる。
公表指数は小数1桁へ丸められているため、88%と20%は概算だ。丸め幅を動かしても生産の戻りは約84~92%、出荷は約17~23%で、二つの差という読み方は変わらない。この幅は統計的な信頼区間ではない。
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鉱工業全体の季節調整済指数(2020年=100)
戻り率は(9月指数−8月指数)÷(7月指数−8月指数)×100。
| 系列 | 7月 | 8月 | 9月 | 8月減の戻り |
|---|---|---|---|---|
| 生産 | 104.4 | 101.9 | 104.1 | 約88% |
| 出荷 | 103.4 | 100.4 | 101.0 | 約20% |
同一公表版の指数から当記事が計算。生産量・出荷量の構成比ではない。
15業種を対で見る:前半
次は、全体指数とは別に、速報概況で増減を説明する重複のない15業種を各1件として数える。生産と出荷を同じ業種・同じ月で対にした。9月の前月比では各8業種が上昇しても、両方上昇したのは金属製品、生産用機械、汎用・業務用機械、自動車の4業種だった。
7月水準を超えたかという別の問いでは、生産が3業種、出荷が2業種、両方が1業種となる。前月比の上昇と、下落前の水準を超えることは同じではない。以下の表と続く表に15業種すべての元指数を示す。
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速報概況15業種の生産・出荷指数(1~8)
同じ業種の生産と出荷を横に並べた。数値は2020年=100の季節調整済指数。
| 業種 | 生産:7→8→9月 | 出荷:7→8→9月 |
|---|---|---|
| 鉄鋼・非鉄金属 | 101.3 → 99.9 → 98.3 | 99.7 → 95.1 → 91.6 |
| 金属製品 | 91.6 → 86.8 → 89.9 | 88.7 → 84.5 → 85.7 |
| 生産用機械 | 134.5 → 142.4 → 147.3 | 133.9 → 140.5 → 144.4 |
| 汎用・業務用機械 | 112.5 → 105.4 → 110.5 | 114.1 → 105.4 → 111.2 |
| 電子部品・デバイス | 107.6 → 105.2 → 108.8 | 109.2 → 106.6 → 106.4 |
| 電気・情報通信機械 | 103.7 → 100.0 → 100.3 | 102.7 → 99.3 → 97.8 |
| 自動車 | 109.9 → 102.4 → 108.0 | 111.1 → 104.5 → 106.9 |
| 輸送機械(除.自動車) | 125.6 → 128.7 → 128.2 | 123.2 → 98.8 → 109.7 |
速報概況15分類を各1件で数える。企業数や指数ウェイトで重み付けしていない。

残る業種と、数字のずれ
自動車は9月に生産・出荷がともに前月比プラスだったが、7月と比べれば生産1.73%、出荷3.78%低い。電子部品・デバイスは生産が7月を1.12%上回る一方、出荷は2.56%下回る。前月の増減だけから同じ業種の二つの動きがそろったとは言えない。
15業種を一律に1件と数えた表は、どの業種にずれがあるかを示す。個々の業種の指数は重みが異なり、15という件数を鉱工業全体の生産量・出荷量の割合へ換算できない。速報で値がない業種などもこの15分類には含まない。
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速報概況15業種の生産・出荷指数(9~15)
同じ業種の生産と出荷を横に並べた。数値は2020年=100の季節調整済指数。
| 業種 | 生産:7→8→9月 | 出荷:7→8→9月 |
|---|---|---|
| 窯業・土石製品 | 88.0 → 85.9 → 84.3 | 86.8 → 84.9 → 84.0 |
| 無機・有機化学 | 82.5 → 80.0 → 80.1 | 83.6 → 78.3 → 76.2 |
| 化学(除.無機・有機化学・医薬品) | 95.8 → 95.5 → 94.5 | 93.2 → 91.3 → 93.4 |
| 石油・石炭製品 | 107.5 → 93.2 → 93.0 | 101.3 → 92.9 → 88.9 |
| プラスチック製品 | 103.4 → 98.3 → 97.8 | 101.2 → 95.8 → 97.3 |
| パルプ・紙・紙加工品 | 92.4 → 89.9 → 89.3 | 89.4 → 84.8 → 85.8 |
| その他 | 94.3 → 91.7 → 91.9 | 94.1 → 91.0 → 90.0 |
速報概況15分類を各1件で数える。企業数や指数ウェイトで重み付けしていない。
比べる時点と分類を動かす
7月は8月の下落前という今回の比較点で、正常水準や長期の目標ではない。15業種で生産・出荷がともに比較先を上回る数は、9月を8月と比べれば4、7月と比べれば1、前年9月と比べれば5になる。前年同月は季節調整済みではない原指数で比べており、前月比と同じ尺度の推移としてつなげない。
月ではなく7~9月平均を4~6月平均と比べると、全体の生産・出荷はともに0.3%上昇し、両方が上回る業種は3/15になる。また、親分類を3組分けた18分類で9月と7月を比べれば両方上回るのは2/18。7月基準の1/15は、その期間と分類に限られた結果だ。
生産の戻りより出荷の戻りが小さい理由は、この集計だけでは特定できない。生産・出荷・在庫は別の指数で、差を未出荷数量や需要不足へ換算できない。9月は速報値で、後の確報や季節調整の改定で変わる可能性もある。
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同じ業種で生産・出荷が両方上回った数
比較期間と分類が違うため、件数だけを横並びの順位にしない。
| 比較 | 対象 | 結果 | 指数の種類 |
|---|---|---|---|
| 9月対8月 | 速報概況15業種 | 4/15 | 季節調整済 |
| 9月対7月 | 速報概況15業種 | 1/15 | 季節調整済 |
| 7~9月平均対4~6月平均 | 速報概況15業種 | 3/15 | 季節調整済 |
| 9月対前年9月 | 速報概況15業種 | 5/15 | 原指数 |
| 9月対7月 | 細分した18分類 | 2/18 | 季節調整済 |
各業種を1件として数える。全体指数への寄与率や統計的な有意差ではない。
次に開示を読むときの確認リスト
- 次の鉱工業指数でも、生産と出荷を同じ公表版・同じ期間・同じ分類で対にして確認する。前月比だけで下落前水準への回復と読まない。
- 今回の15業種は重みなしの速報概況分類。個別企業の業績や需要原因へ直接換算せず、四半期と分類を変えた結果も合わせて読む。
まとめ
9月は生産も出荷も前月より上がったが、8月の落ち幅に対する戻りは生産約9割、出荷約2割だった。速報概況15業種でも、両方が前月比で増えたのは4業種、両方が7月水準を超えたのは1業種。全体指数の反発と、同じ業種へ広がる回復を分けて見られる。
ただし四半期全体は生産・出荷とも小幅増で、15分類の1業種は細分類なら2業種になる。速報と比較条件を固定した短期の答えだ。次の公表で生産と出荷を同じ業種・同じ基準で確かめるための視点にはなるが、需要の原因や個社業績の予測は示さない。
参照した開示・一次情報
- 経済産業省(e-Stat配信)|鉱工業指数 2026年9月速報 Excel統計表official_statistics / 業種別sheet 1~25の時間軸コード別B:Q列とsheet33。sourceRow・sheet名を保存。
- 経済産業省(e-Stat配信)|鉱工業指数 2026年9月速報 概況冊子official_statistics / PDF p.1~5、38~41。概況、速報で増減を説明する15業種、期間注記、業種別一覧。